☆老紳士と娘☆

運命の終焉





それ以来、わたしはお仕置きの口実を見つけるたびに、娘のお尻をたっぷりと折檻した。

膝の上は、老体にこたえるので、いろんなポーズを取らせてやった。娘は決して抗わず、わたしの言いつけたとおりの姿勢をとった。
そして、いつもお仕置きを素直に受けたものだった。

掌も腫れてしまうが、道具は使わなかった。若い新鮮な膨らみに接触できる悦びを、自らに断ちたくはなかった。

娘はいつもお尻が痛くて泣いたものだった。

晩年期のわたしは、まるで夢の中にいるように幸福だった。

しかし、この楽しみにピリオドを打たねばならない運命がやって来た。


それは寒い真冬日のことだった。

わたしは、娘の部屋で葉巻を吸いながら、いつものようにお仕置きの口実を考えていた。

そのとき、娘はバスルームでシャワーを浴びていた。

バスルームから出てくれば、素っ裸で部屋にはいってくることはわかっていた。もう最近では、わたしの前でも平気だったのだ。


(今日は、娘を生れたままの赤ん坊にして、お尻をたたいてやろう)


そんな変な欲情に駆られていたわたしは、それまでになんとか罰の口実を見つけようと、躍起になっていた。

そして、彼女の机の引出しまで開けて、ネタを探していたのだ。


そのとき、小さなアルバムが目に留まった。中を覗くと、家族旅行でウィーンを訪れたときの写真がぎっしりと詰まっていた。

娘はまだ幼く、十二歳くらいのときのようだった。そして、かわいい少女を挟んで両親の姿があった。
写真の左端には、娘の祖母らしき老婆の姿も見受けられた。


その時だった!


わたしは驚愕した。全身が打ち震え、心臓は張り裂けんばかりだった。

そして、老婆から目を離すことができなかった。

こんな残酷な偶然があるはずはない・・・


老婆の顔には深い皺が多数、刻み込まれていたが・・・

しかし、それは紛れもなく、四十六年前に別離した、わたしの細君だったのだ。


わたしは筆舌に尽くし難い心境で、いま八十回目のバースディを迎えようとしている。


【完】





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