Roman Books
抜粋




【白い太腿】   アレクサンダー・トロッキ 廣瀬順弘・訳  昭和58年発行
(原題 White Thighs) F/m



ある日わたしはアンナにいった。

「ねえアンナ、ぼく、アンナにはいつもいい子でいたいってことを証明したいんだ。いけない子だったときはお仕置きをしてよ」

「するわよ。そんなことあなたがわざわざいうことないの!」

わたしのいおうとしていることを、アンナはすぐにはつかめなかった。

「ハリスおじさんがやるのとおなじようにだよ」

「おなじようにって?」

「ぶってほしいんだ」

「あなたに痛いおもいはさせたくないわ」

「お尻だったら−」 と、わたしは口ごもりながらいった。

「それほど痛くはないよ。とにかくそういつまでもは痛くないから」

アンナの眼に、得心の色がちらりとうかんだ。たしかにりっぱに道徳にかなっていた。懲らしめてくれ、罰してくれと、わたしのほうから要求するのだから殊勝ではないか!

はじめはアンナは、ズボンの上からわたしの尻をたたいた。それでは目的達成というわけにはいかない。アンナもわたしも気がついていた。わたしたちはわたしのズボンをおろす然るべき理由 − 道徳的にみて充分うなずけるだけでなく、理にかなっていて、他人のむきだしの尻をたたくという性的な意味あいも翳りがうすくなるような理由をさがさなくてはならなかった。が、そうやすやすとみつかるものではない。わたしは何度も彼女に、ズボンをおろしてたたくほうがずっと痛いから、お仕置きの効果があがるといった。アンナは同意はするのだが、やはりためらっていた。そのうち、ズボンの上からだと、ときどきアンナの手がボタンにあたり彼女のほうが痛い目にあうことがあるのに気づいて、わたしがその点を指摘すると、はじめて彼女も納得した。


 あの初めての体験はいまも鮮やかに記憶している。わたしはズボンをくるぶしまでひきさげられ、薄桃色の尻を大空のもとにさらしてアンナの膝の上にかがみこんでいた。色褪せた木綿のドレスの生地を通して、彼女の腿のあたたかみが股間にじかに伝わってくる。アンナは一生懸命わたしの尻をたたいて、楽しんでいるのではない、お仕置きをしているのだと、自分を納得させようとしているようだった。しかし不思議なことに、罰を与えているのだと確信すればするほど、喜びは深まるふうだった。そしてしまいには、わたしが本物の涙をみせるまで容赦しようとしなくなった。



参考・登場人物  サウル(わたし)−12歳、 アンナ−24歳位、サウルの家庭教師




Menu Page Roman Page


Top