巴里の憂鬱・第四章
継母の楽しみ




隣の部屋ではミシェルがごそごそと物音をたてていた。部屋を片付けるよう、命じられていたので、お仕置きされまいと必死に演技をしているようだ。ドアの向こう側にはミシェルがいる。物音の大きさからしても、自分の泣き声とお尻をたたかれる音はしっかりとミシェルの耳に届いてしまう。

「 ああ・・・」

ソフィ−は絶望的な呻き声を上げた。

やがて、継母が二階から下りてきた。手には「成績通知表」、「ガラスの破片」そして「アルバ−トの写真」が握られていた。これらはイスの左側の約50センチのところに並べられるのだ。つまり娘を膝の上にうつぶせに乗せたとき、ちょうどソフィ−の眼がこれらを真下に眺められる位置に配置するのだ。こうすることで、どうしてお尻をたたかれているのか、しつこくわからせてやるためだった。これはマルセイユの小学校で実践してきたマクシミリアン先生独自のやり方だった。そこでは多くの美少女たちが、これによって涙を流したものだ。そしてポタポタと滴り落ちる涙でテストの答案用紙が台無しになってしまうことが常だった。

今、継母は同じやり方で、ソフィ−の美しい涙でツ−ショット写真を台無しにしてやるつもりだったのである。
ソフィ−に初めて試みるこのやり方は耐えがたい屈辱を与えるに違いない。まして、これから罰を受けようとしているのは、
小学校の女児ではなく、すっかり成熟したハイスク−ルガ−ルなのだ。

ここに来て継母はなかなか思い浮かばなかった辱めの名案が次々と頭に浮かんでくるのだった。後はそれを実行に移すだけだ。

継母は三つの原因を並べるとイスの配置に神経を尖らせていた。そして、ようやく位置を確信すると腰をかけ、右側にソフィ−を呼び寄せた。

しかし、ソフィ−はますます不安になった。なぜなら、このまま継母の膝の上に横たわると、ちょうど真後ろにあるドアの位置に尻を向けることになる。もしミシェルが扉を開けば、すべて丸出しなのだ。しかし、最早、口答えはできなかった。イスには万を持して鞭が掛けられている。

母親はいつもより大きな声でお説教を始めた。


「 ソフィ−! おまえはとても悪いことをしたから、今からたっぷりお仕置きされるんだよ、いいかい。そしたらどんなお仕置きをされるのか言ってごらん」

「 ・・・はい・・わ、わたしはお母さまの膝の上に乗せられて・・たたかれます」

「 そうだね。あれだけ悪さをすれば、ひどくたたかれて当然だ。それなら体のどこをたたかれるの?」

「 あ、あの・・お・・う、うしろを・・」


パシ−ン!


継母は突然、体を右に寄せると、スカ−トの上から激しく娘のお尻を打った。


「 ここだろ、いつもたたかれるのは! うしろとは何ですか? もっと大きな声を出して、はっきり言いなさい!」

「 お、お尻です」

「 声が小さい!」

「 お尻です。わ、わたしはお母さまにお尻をたたかれます」

「 ちゃんと言えるじゃないか。あまり手間をかけさせないでおくれ」


そのとき、部屋を片付けていた隣の物音が聞こえなくなっていた。明らかにミシェルがドアを隔てて聞き耳を立てているのだ。

継母は、かつてないほど異常に興奮していた。ミシェルを利用することで、お仕置きは想像以上の効果をもたらすし、楽しみも十倍になっていたからだ。

そして、ますますサディストの血が騒ぎ出した継母は、よりエスカレ−トした行為に挑戦してみたくなるのだった。

(そうだ、ミシェルにも見せてやろう。あの子は好奇心でいっぱいなんだから。なにも隠す必要なんてどこにもありゃしない。どうしていままでこんなことに気が付かなかったんだろう)

それはあまりにも無情な発想だった。そして、あまりにも嗜虐的だ。
しかし、
このサディストを制止できる者はここには誰もいないのである。


「 ミシェル! ミシェル! 入っておいで」

ソフィ−は耳を疑った。声や音だけでも恥ずかしいのに、幼い弟にお仕置きの現場を見られてしまうなんて・・あぁ・・すでにソフィ−の大きな瞳には涙が溢れていた。


「 ミシェル、いまからママがお姉さんをたたいてやるからね。おまえはそこで見ているんだ。もう少し右に寄って、逆だよ、そう、そこ。そこに立ってよく見ているんだ」

母親はソフィ−の真後ろにミシェルを立たせた。これで尻を突き出すと、言わずとも知れたことだ。

「 ミシェル、おまえは日頃からよくぶつぶつ言ってるね、自分ばかりが不幸だって。でもそれは心得違いもいいところだよ。お姉さんだってね、こんなに大きくなっても、いたずらをすれば、お仕置きされるんだよ。いいかい」


その時だった。じっと黙り込んでいたミシェルが急に大声で泣き出したのだ!


「 ああ、ママ! お姉さんをたたかないで! だ、だって悪いのはボクなんです。ボクがからかったから、それでお姉さんが・・ああ・・たたくならボクをたたいて、お姉さんはたたかないで!・・うわぁ〜・・」

そして、更に泣き声は大きくなった。

これには母親も驚いた。自分の腹から生まれた子供にこんな道徳感情があるとは思わなかったのだ。
瞬間的に感動した母親だが、これで楽しみをやめるわけにはいかなかった。ここまで来たのだ。後は突っ走るだけだ。





Menu Page Next Page