巴里の憂鬱・第九章
しつけの広場




マクシミリアンの異常な行動はますます顕著になっていった。もうこの女はすっかり幻想の世界に陶酔してしまい、現実とそれとの区別がつかなくなっていたのだ。

ブルボン公会堂では「子供の教育と躾のシンポジウム」が開かれていた。自治会を代表して演説台の前に立ったマクシミリアンは、なんと[手に負えない年頃の娘の処方箋]と題して、野外スパンキングの効能についてその成果を発表していたのである。

公会堂には百人あまりの婦人たちや教育関係者らが出席していた。
演説が始まるなり、会場からはどっと、「どよめき」が沸き起こった。そして大半の出席者は呆れ果て、中には「作り話だ」と腹を抱えて笑いだす者まで出てきた。また体罰禁止を唱える若い婦人グル−プのひとりが「少女虐待だ!」と野次を飛ばした。

演説の最中に出席者の大半は席を立って退散していった。 

しかし、中には熱心に聞き入る三人の婦人たちがいたのだ。彼女たちは退散するどころか、席を移して一番前に座りなおした。そして腕を組むと、マクシミリアンの演説にいちいちうなずきながら賛同するのだった。この婦人たちは、各自治会で悪評高き保守派の代表だった。ちょうどソフィ−と同じ年頃の娘をもつこの婦人たちは、家庭ではいまだに娘を厳しくお仕置きしているのだった。

演説終了後、小さな喝采を浴びたマクシミリアンはこの婦人たちとすっかり意気投合してしまった。
そして、愚かな演説者を含めた四人の古臭い厳罰主義者たちは会場を出てからも、近くのカフェで娘の教育論に花を咲かせた。
それは深夜にまで及び、四人は結束を誓い合って、愚かにも「乾杯」をあげたのだ。

それ以来、土曜日の午後七時を過ぎたころには、「こども広場」に四組の親子の姿が見られるようになった。マクシミリアンの凌辱教育に賛同した婦人たちが自慢の娘をここに連れてくるようになったのだ。もちろん目的は娘をお仕置きするためだった。

少女たちはいずれ劣らぬ美しい娘ばかりだった。

「こども広場」はやがて愚かな母親たちによって「しつけの広場」と呼ばれるようになっていた。

最初のうちはお互いに遠慮しあって、距離を保ちながら「母親の仕事」に励んでいた。

しかし、やがて各々の親子たちがマクシミリアンを中心に取り囲むようになり、お仕置き談義に花を咲かせながら、娘たちを「教育」するようになっていた。

春を匂わせる暖かいこの日も「しつけの広場」に四組の親子が揃っていた。

四人の美しい娘たちは、すでにそれぞれの母親の膝にうつぶせに乗せられて、お尻を丸出しにされていた。
そして、こんな恥ずかしい恰好のまま、母親たちの談話が終わるまで、お仕置きされるのを待っていなくてはならなかった。


「 あら〜、マクシミリアンさん、この子がソフィ−さん?
噂どおり、何て綺麗なお嬢さんだこと! それに気品があって、
羨ましいほどの脚線美ですわ!
奥様の厳しいしつけの賜物ですわね」

「 いえいえ、まだまだですわ。だからここに連れてくるんですよ。それよりおたくのお嬢ちゃんも綺麗ですわ、お幾つ?」

「 ええ、うちのは十七歳なんですよ、まだまだ、おいたが絶えなくってね、ここでうんと、しつけをしてあげますわ・・・・さあ、 クレア! いいこと、今夜、おまえのお尻はお猿さんになるんだよ」

マクシミリアンは目を異様に輝かせながら、別の親子を見やった。


「 おたくのお嬢ちゃんはお幾つ? あらまあ!うちの子と同じですっかり成熟してらっしゃること! それにとってもスタイルがいいわ! でも、これでは奥様としては悪い虫が付かないかとご心配でしょう?」 

「 そうざますのよ、奥さん。うちのは十八歳なんですがね、この前も留守番を頼んでたら、いつの間にか彼氏を部屋に呼んでいてね、なんとまぁ、抱き合ってキスしてたんざますのよ。お勉強するようにあれほど言い付けておいたのに、この子ったら。
これ!
クリスティ−ヌ、おばさまにご挨拶は?」

「 ・・・・・・・・」

「 これ! クリスティ−ヌ!」


ピシィ−ン! ピシィ−ン! 


婦人は、娘の肉づき豊かなお尻を鋭く打った。


「 いえいえ奥様、挨拶は結構ですのよ。こちらにお尻を向けたまま、挨拶なんて出来ませんもの」

「 ・・あら・・そうざますわね、これは失礼しました・・オホホホホ」


婦人は罰が悪そうに顔を赤く染めた。

膝に乗せられている美少女たちは、みんな恥ずかしさのあまり手で顔を覆っていた。

そして誰からともなく、お仕置きが開始されるのだった。

しかし、広場の光景はまさに異常だった。
膝の上にあるのが小さな女の子のお尻なら、むしろ滑稽で、微笑ましい光景として済まされるのだが・・・。

今、母親たちの膝の上にあるのは、たとえ日が暮れようとも公衆の前に曝してはならない成熟しきった果実ばかりだった。


パチ−ン! あぁ、ピタ−ン! ヒィ〜、いゃ〜、パシャ〜、ピシャン! あぁ〜ん!

四組の親子が同時に行うお仕置きは、様々な悲鳴や折檻の音が入り混じって、やがては美しいハ−モニ−となった。
それはジャズを超越した、まったく新しいミュ−ジックの誕生を思わせるようだった。


そしてお仕置きの効果を上げるため、親子の組替を提唱するものまで現れた。この婦人は十七歳のカトリ−ヌの母親だった。
もちろん、お互いに罰の理由をしっかり確認したうえで、娘たちへのお仕置きが行われるのだ。

これにはマクシミリアンも大賛成だった。なぜなら楽しみは単純計算しても四倍になるからだ。いや、他の組合せが行っているお仕置きを眺める楽しみも含めると、それ以上と言わねばならない。


「 ほれほれ、クリスティ−ヌちゃん、おばさんのお膝にいらっしゃい!
あなたは、また男の子をお部屋に連れこんだようね。いくら叱られても言うことを聞かない子は、おばさんが思いきりお尻をひっぱたいてあげるからね」

「 あぁ〜ん、おばさま、恥ずかしいから・・やめて〜・・あぁ〜」


パチ−ン! パシ−ン! ピシィ−ン! ピシィ−ン!


「 あぁ〜ん! おばさま〜、いたぁ〜い!」


マクシミリアンはクリスティ−ヌの艶やかに成熟したお尻をやや緊張気味にたたいていた。

しかし、同時にその表情は至上の歓びに満ち溢れていた。他人の娘を膝に乗せ、お仕置きすることが、これほど新鮮だとは予想もしていなかったのだ。

そして娘を変えるたびに新しい発見と驚きがあった。もちろん他の母親たちも同様に、異常に興奮していた。

しかし、娘たちにとっては見ず知らずの大人たちから、お尻をたたかれるのは気が狂いそうなほどの屈辱だった。まして家の中ではなく、野外なのだ。

ここでもソフィ−の人気は高かった。ときにはソフィ−を奪い合う、愚かな光景すら見られる有様だった。

やがて、草むらの覗き魔が現れだしたのも当然の成り行きだった。
ところが母親たちはこんなことさえ、百も承知の上で、自らの欲望を満たすがために美しい娘たちのお尻を犠牲と屈辱に曝すのだった。



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