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The Introvert
ローラの境遇 |
「お客様、昨日は大変失礼をいたしました。まだまだ私のしつけが足りないものでして・・・」 「いえいえ、いいんですよ。・・・ところで、お嬢ちゃんはお幾つですか?」 「ああ見えて、まだ十三歳なんですよ。何せここに来て、一ヶ月しか経っておりませんので・・」 「おたくの娘さんじゃないんですか?」 「違いますよ。いえ、何も無理矢理、働かせてるわけじゃありません。あの子はちょっと不幸な境遇でしてね」 マスターの声は次第に小さくなっていった。
「それはまたお気の毒なことです」 「何せ、サイゴン陥落の日に北側の銃弾にやられたとか。あともう少しで終結だったんですが・・・母親のほうもきっと、それが原因で病を患ったに違いありません」 「・・・・・・・」 「身寄りがないために、私があの娘を引き取ったんですがね。 ところがこのデフレ不況ですっかり客足が鈍りましてね、あの子の生活費を賄える余裕なんてないんですよ」 このときわたしはマスターの話が、かなり意味ありげに思えてきた。 「御覧の通り、あれだけの器量とスタイルですから、あと何年かすれば、きっといい人が見つかって、嫁いでくれるでしょうがね・・・しかし、それまで面倒をみてやれる自信がなくて、困ってるんですよ」 「じゃあ、どうなさるおつもりで?」 「実を申しますと、あの子を養女として育ててくださる方を探してるんですよ。経済的に余裕のある方なら、きっと幸福にしてくれるでしょう」 「わたしが引き取りましょうか? もちろん、あの子さえよければのお話ですが」 マスターは目を丸くして、わたしをじっと見つめた。
「実はわたしは独身なんですよ、マスター。いえいえ、なにも金持ちじゃありません。ただ、子供ひとりくらいなら引き取れる余裕はあります。もちろん、子育てのほうになると話は別でしょうが・・・まあ、わたしなりの躾けかたをいたしますよ」 この後半部分の言葉を発したとき、わたしの一物が急速に勢いづいてきた。
しかし、同時にわたしは、この娘に深く同情を寄せていたことも事実だった。 このあと、話はとんとん拍子に進んでいった。 ローラが、ほんとうにこの話を受け入れたのかどうかはわからなかった。 ローラを養女として迎え入れるには、いろいろと手続きを要した。 わたしは戦災孤児を救ってあげたいという気持と、一方でやましい気持が交錯していた。 それにローラの顔立ちや体つきは、わたしが長年に渡って想い描いてきた、お仕置きされる少女のイメージにぴったりだった。 わたしは、急に周りが明るくなったような気分だった。 もともと、わたしが求めていた女性は「妻」ではなく「娘」だったのだ!
「ええ、気に入ったわ。テレビはあるし、ビデオだってあるわ、それに漫画も」 「それはよかった。でも夜になって、お化けが恐くなったら、おじさんの部屋にくるんだよ」 「あたし、お化けなんて恐くないわ。だって、そんなの作り話だもん」 「おお、そうか、よしよし。それなら安心だよ」 わたしはローラの頭を優しく撫でてやった。 つい昨日まで閑散としていた家の中に、美しい女の子がいる。 その夜。 わたしは、急に彼女がいじらしくなってきた。こんな気持ちになったのは、初めてのことだ。 そして、この日からわたしの「観察日誌」が始まった。 |
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