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昭和6年。日本の歴史では、満州事変が勃発した年です。
その翌年の5月15日には犬飼毅首相が暗殺されました(五・一五事件)。
この時代背景をみても如何に古い書物であるかが窺い知れます。
文章も現代の当用漢字にない文字が殆どで、戦後生れには文字の解読が必要な書物です。
部分的に文章が欠落しており、検閲によって削除されたのかも知れません (定かではありません)。
ちなみに昭和八年にはブロレタリア文学の作家・小林多喜二さんが特高警察による謀略的な拷問で
虐殺される事件が起きています。
ドリーモートンの想い出の後書に解説されていますが、著者は仏国のユーグ・ルベルと推定されています。
ドン・ブランナス・アレラはペンネームです。ユーグ・ルベル (本名・ジョルジュ・グラッサル・ド・ショファ) は、上記以外にも 「 FRANK AND I 」 など数多くの遺産を後世に残しています。
物語の内容は、十九世紀のルイジアナ州白人奴隷を扱った鞭打小説ですが、子供の成長過程に於ける、
しつけのスパンキングを本髄にされている愛好者の方々には、いささか退屈かも知れません。
しかし、十九世紀の黒人奴隷制社会を背景に、高い教養とプライドを持つ、若くて美しい白人娘たちが、
牝馬 として扱われ、裸のお尻を鞭打たれながら、馬車を引っ張る場面は現代では到底理解できない程、
倒錯的で、幻影的な風景だったものと思われます。
尚、翌月の昭和六年三月にはブルーの表紙が発行されているようです。
定価 一円二十銭。
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