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Big
Daddy
娘の教育方針 |
「・・・・・・」 「トレイシー! 早く、起きなさい! いま何時だと思ってるんだ!」 ジェームズは癇癪をおこした。11時半を過ぎても娘は部屋で眠っている。昨夜の帰宅は午前様だった。
怒った父親は、大きな足音を立てて階段を駆け上った。
「・・・・・・」 「おい! まだ眠っているのか? ・・・は、入るぞ !」 ジェームズはいささか躊躇しながら、思い切って部屋のドアを開けた。
いつもそうだった。娘のいないところでは腹が立って仕方がないのだ。 「ええぃ! 糞ったれ!」 ジェームズは歯痒かった。
しかし、父親の過度の愛情は奔放で、我が儘な娘を作る結果となってしまった。 (今のうちに何とか手を打たねば・・・)
(亭主が働いている最中、まったく暢気なやつらだ!) ジェームズは不機嫌だった。
「あらあら、奥様も大変ですわね、一度、スクールカウンセラーに相談なさったら?」 「あれは生徒だけがカウンセリングの対象じゃないの?」 「いえいえ、親でもできますのよ。うちも相談してみたんだけど、随分、参考になりましたわ」
ジェームズの心は、もう週末の休日に傾いていた。
「わたしは当校のカウンセリングを専任しているヘレンです。どうぞお坐りになってください」
「はい。あの子が十二歳のとき、妻が病死しましてね、それで甘やかした結果が今日です」 「なるほど。ところでトレイシーさんは学校で体罰を受けたことがありませんね?」 「ええ。入学時に同意いたしておりません」 「では早速、手続をお取りください」 「はい。わかりました」
「はぁ・・・」 「ところで、学校の教育だけでは不十分です。家庭でも厳しいお仕置きが必要です」 「お仕置き?」 「はい。悪いことをしたら、あなたの手でうんとこさ、娘さんのお尻をおぶちなさいまし」 「お、お尻をですか!」 「そうです。頭や頬をたたいてはいけません。お尻を裸にしてうんと折檻なさい」 「し、しかし娘はもう十七歳です。それにあの子はもともと早熟でして・・ご存知のとおり、今ではすっかり成熟した体になっておりますが・・」 「構いません。いくらお尻が大きくなっても、しつけには関係ございません」 「・・・・・・」 「子供はね、中味が伴わないまま、体のほうが先に大きくなるんですよ。大人の縫ぐるみを被った小さな子供とお思いなさいまし」 「わかりました。そ、それにしても・・尻を裸にして、男の手でたたくというのはどうも・・」
「・・・・・・」 「大変、失礼ですが、最近は子供に嫌われることを恐れる親が増えています。特に父親の権威はすっかり地に落ちてしまいました。しかし、このままではお嬢さんは駄目になってしまいます」 「おっしゃる通りです」 「ご心配をおかけするようなことを敢えて申しあげます。実は最近、お嬢さまは教職員の間でも評判が悪くなっているようです」 「ほ、本当ですか?」 「宿題はしないわ、仮病を使って早退するわ、そのほかにも沢山あります。ここで手を打たないと駄目ですよ。いいえ、まだ手遅れではありません」 「そう願いたいものです」 「わたしの言う通りにしてください。それならば心配御無用。そして必要ならいつでもお電話ください。わたしは二十四時間態勢です。自宅の電話番号も教えておきましょう」
まったく予想外の展開にジェームズの心は揺れていた。 もうここまできては、すべてベテラン女史のアドバイスに従うしかないようだ。
(あの子のお尻を裸にしてひっぱたくなんて・・俺にそんなことができようか?)
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